こんにちは、かいとうです
ボクシングは階級制スポーツである以上、体重を目標ラインまで落とすことは必須ですが
「試合数日前から水分・塩分・食事を絞り続ける」
という昔から言い伝えの様に行われる長期的な制限法は、実は思わぬデメリットを伴います
本記事では、その落とし穴を掘り下げるとともに、より安全かつ効果的な短期集中型プロトコルをご提案します
長期的制限が招く問題点
1|慢性的脱水状態
長期間にわたる水分制限は、血液中の液体成分を徐々に減少させます
体内の水分量が低下すると心拍出量が落ち、運動中の酸素運搬能力が著しく低下します
スパーリングやミット打ちといった高強度トレーニングの継続が困難になり、練習の質自体が下がってしまいます
2|電解質バランスの乱れ
継続的な塩分カットは低ナトリウム血症を招き、軽度でも頭痛や倦怠感、集中力低下を引き起こします
さらにクロールやカリウムなどの必須ミネラルが不足すると、筋痙攣や神経伝達障害、最悪の場合は不整脈などのリスクが高まります
最後の追い込みをしている状態ではなくなります
3|パフォーマンス低下の連鎖
体の水分と電解質の両方が失われると、筋血流量の低下や血液粘度の上昇を招き、最大酸素摂取量(VO₂max)が低下し、乳酸閾値も下がるため、同じ負荷でも疲労が早く訪れ、試合当日の動きやスタミナ維持に大きく影響します
4|メンタル面への悪影響
慢性的な脱水状態は認知機能や気分にも影響を及ぼします
思考の鈍化や判断力の低下、イライラ感の増加といった症状が現れやすく、カットのストレスと相まってメンタルコントロールを困難にします
5|健康リスクの蓄積
腎機能への負荷増大やレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系の過剰活性化はホルモンバランスを乱し、免疫力低下や熱中症リスク、慢性疲労を招きます
長期的には体調不良の慢性化やトレーニング効率の低下を引き起こす可能性があるのです
選手の現状と誤解
多くのボクサー及び指導者が「一気に水分を減らすより、少しずつ全体的に絞るほど安全かつ確実」と信じ、日常的に水・塩・食事を抑え込む手法を実践しています
しかし、この方法で得られる体重減少の大部分は慢性的な脱水であり、脂肪燃焼には繋がらず、計量後のリカバリーに十分な水分を確保できず、試合本番でのパフォーマンスが犠牲になるケースが少なくありません
代替案:短期集中型プロトコルのすすめ
1|ウォーターローディングからの水抜き
試合約1週間前から3日間にわたり水を大量摂取(例:70 kgなら7 L/日)。その後、計量24時間前から水分を急激に制限します
これにより、体内の排泄する力を利用して短期間で効率的に水分排出が可能です
詳細はこのnoteにまとめています

2|ナトリウム操作のタイミング
計量3日前まではやや高めの塩分を摂取し、2日前から1日前にかけて塩分をカットします
カットするといっても0gにはしません
塩分を0gにすると最終的に水は確かに抜けますが、体が水を溜め込む働きも強くなるので水が抜けにくい状態になってしまうので水抜きの過程が辛くなります
何より低ナトリウム状態でコンディションを崩しやすくなります
ポイントは最初から多めに摂取して最終的には0gにしないことです
3|段階的な食事調整
エネルギー不足による筋タンパクの分解を防ぐため、主食(米・麺など)の量を段階的に3日前から調整し、最終的な体重調整日(計量2日前)までは、低脂質・中GIの炭水化物を中心に、鶏胸肉や魚介など消化の良い良質タンパク質をしっかり確保します
絶対に最後の最後まで糖質を抜くことはしません
4|リカバリー時の戦略
計量直後のリカバリーでは、速やかな脱水の回復とグリコーゲン再合成が鍵
ヴィターゴなどの高分子糖質や電解質ドリンクを活用し、1時間ごとに500 mL程度の水分を補給しながら糖質を30~50 gずつ摂取。塩分は3~5 gを目安に再導入します。
まとめ
計量数日前からの長期的な水・塩・食事制限は、「減量できた」という数字の裏に大きなパフォーマンス低下と健康リスクをはらんでいます
代わりに「試合直前に集中的に絞る」短期集中型プロトコルを導入することで、練習強度の維持と計量後のリカバリー両面を両立させることが可能です
水も塩も糖質も計量前日までカットする必要はありません
選手は自身の身体特性と相談しながら、安全かつ効果的に階級コントロールを行ってください
ではまた:-)
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