こんにちは、かいとうです
ボクサーは試合前日に体重計を通過するため、極端な水抜きと食事制限を行います
計量で体重をクリアした瞬間から、試合本番までの 20〜30 時間は
身体を「干からびた状態」から「100 % コンディション」へ戻す超重要フェーズです
本記事では、再現性より“効率”を最重視し、最速でエネルギーと水分をリロードできる 5 種類の食材・ドリンクを解説します
効率だけを考えた食材をまとめています
リカバリーを考えてなかった選手は是非最後まで読んで1つだけでも取り入れてみてください
選手本人だけでなくサポートスタッフもぜひ参考にしてください
1. クラスターデキストリン+塩の濃縮ドリンク
「クラスターデキストリン」とはトウモロコシ由来の炭水化物を特殊加工して分子を巨大化させた粉末。水に溶かしても“サラサラ”で胃に長く留まらず、大量の糖を一気に小腸へ送れるのが最大の特徴です。ここに食塩を 3 g/L 加えると、糖と塩が同時に腸に吸収され、水も一緒に体内へ引き込めます。
- メリット
- 10 % という濃い濃度でも水のように飲め、胃もたれゼロ
- インスリン(糖取り込みホルモン)が素早く分泌 → 筋肉に糖を急送
- 食塩で血液量も同時回復
- デメリット
- 市販価格が高い(1 kg = 3,000〜4,000 円)
- 100 g 以上入れると甘味疲労を感じる人がいる
- 摂り方
- 計量直後 15 分以内に 体重×1.2 g(60 kg 選手なら 72 g)の粉末を 500〜700 mL の水に溶かす
- 食塩 2 g を同時投入し、一気に飲み干す
2. 塩おにぎり
「GI」とは血糖値の上がりやすさを示す指標。タイ米など長粒種のジャスミンライスは GI 値 100 超で、白米の中でもトップクラスの“速攻型”炭水化物。温かいうちに握り、外側に軽く食塩を振るだけのシンプルな塩むすびにします。
- メリット
- 固形なのに消化が早く、液体だけでは足りない糖を補充
- 食塩でナトリウム(体液に必須)を追加投入
- 手軽に持ち運べる
- デメリット
- 固形食なので、ドリンクより胃排出は若干遅い
- 温度が下がるとデンプンが固まり吸収速度が落ちる
- 摂り方
- クラスターデキストリンを飲んで 15 分後から 90 分以内に 250 g の米×2~3 個
- 咀嚼は軽めで OK(消化吸収を邪魔しない程度に)
3. アーモンドミルク+プロテイン
炭水化物とタンパク質が 4:1 の黄金比で入った飲料
糖でエネルギーを戻しながら、少量のタンパク質で筋修復をスタートさせ、追加のインスリン分泌でさらに糖の取り込みをブーストします
- メリット
- 乳タンパクが筋肉の分解を抑制
- カルシウムやカリウムも補給できる
- 甘さで“味変”となり、食欲を維持
- デメリット
- 乳糖不耐症の選手はお腹が張ることがある
- 冷蔵保管が必須
- 摂り方
- 計量後 90 分以降に 500 mL(炭水化物約 50 g)をゆっくり
4. ハチミツ+マルトデキストリンジェル(2:1 ブレンド)
腸には「グルコース専用」と「フルクトース専用」の 2 種類の輸送路があります。ハチミツ(フルクトース多め)とマルトデキストリン(グルコース系)を 2:1 で混ぜたジェルなら、2 本の高速道路を同時に使い、1 時間で 90〜100 g の糖を吸収できます。
- メリット
- 固形食が入らない時でも高密度で糖を摂取
- ハチミツ由来の微量ミネラルが味をまろやかに
- チューブで携帯でき、ウォームアップ中でも飲みやすい
- デメリット
- 濃度が高いので必ず水を一緒に取らないと下痢リスク
- 極甘のため、味覚疲労が起きやすい
- 摂り方
- 60 g の配合で 200 mL の水と同時に
- 試合当日朝までに 2〜3 本を目安(3 h 置き)
5. 高ナトリウム ORS(経口補水液)
「ORS」は Oral Rehydration Solution の略。OS‑1® のように 食塩(ナトリウム)とブドウ糖が最適比で配合され、水分が腸から血液に移動する速度を 2 倍に高めます。さらにカリウムも入っているため、細胞内の水分もスムーズに戻ります。
- メリット
- 水だけを飲むより吸収が速い
- 電解質バランスを短時間で正常化
- 低カロリーなので、糖質過剰になりにくい
- デメリット
- 塩味が強く、好みが分かれる
- エネルギー源としては不十分(糖は少量)
- 摂り方
- 計量直後にまず 500 mL を一気に
- その後 2 時間でさらに 1 L を目安(汗量で増減)
なぜこの 5 食材なのか——基礎原則をやさしく解説
- グリコーゲン“黄金の 4〜6 時間”
筋肉に貯まる糖=グリコーゲンは、空っぽになった直後ほど合成速度が速い「ゴールデンタイム」があります。液体+高 GI の糖を集中投入すると回復速度が 2 倍以上に跳ね上がります。 - 塩(ナトリウム)は“水を引き込む鍵”
小腸の壁では、糖とナトリウムが「一緒に運ばれるエスカレーター」に乗って体内へ入ります。つまり、糖だけ・水だけよりも糖+塩+水をワンセットで入れるのが最速。 - 糖の吸収“2 車線化”作戦
グルコース専用の通路は 1 時間で 60 g ほどで渋滞。そこにフルクトースを混ぜると、専用通路(GLUT5)が増設され、合流式で 90 g 以上を通せます。ジェルの 2:1 ブレンドはこの理屈。 - タンパク質は“少量でホルモンを味方に”
がっつりステーキを食べても消化が追いつきません。チョコレートミルク 1 本で筋分解を止めつつ、インスリンを少し上げて糖の取り込みを後押しする程度がベスト。
時間別モデルプラン(体重 60 kg の例)
時間 | メニュー | 目的 | 炭水化物 |
---|---|---|---|
0:00 | クラスターデキストリン 72 g + 塩 2 g(溶液 600 mL) | 胃を通過する“糖点滴” | 72 g |
0:15 | 塩むすび 2 個(ジャスミンライス 500 g 相当) | 固形で追加チャージ | 100 g |
1:30 | 低脂肪チョコレートミルク 500 mL | 糖+ミルクタンパク | 50 g |
2:30 | ORS 500 mL | 体液量の微調整 | 9 g |
3:00 | ハチミツジェル 60 g + 水 200 mL | 車線拡張で追加糖 | 45 g |
合計(3 h) | — | — | ≈276 g |
目標値:体重×4.5 g ≈ 270 g の糖を 3〜4 時間で確保。その後、就寝までに同量をもう 1 セット繰り返せば 24 時間で 700 g 以上の糖が体内に戻り、試合開始時には満タン状態になります。
よくある質問(Q&A)
Q1. クラスターデキストリンが手に入らない場合の代替は?
A. マルトデキストリン粉末でも可。ただし浸透圧が高くなるため、濃度は 8 % 以下・塩は変わらず 3 g/L に。
Q2. ORS はスポーツドリンクで代用できる?
A. いわゆるスポドリはナトリウムが半分以下。塩 1 g を追加して飲めば近い効果になるが、糖濃度は上がるので水で少し薄めるとベター。
Q3. タンパク質はもっと摂らなくて大丈夫?
A. 試合前日に筋繊維を“修復”する必要はほぼありません。胃腸に負担をかけず、糖の輸送を邪魔しない最小量(総エネルギーの 10 % 程度)で十分。
安全上の注意
- 下痢は一番の敵:高濃度糖や液体を一気に飲むと腸が水分を逃しやすくなります。必ず少量ずつ増やし、体調を観察。
- 味覚疲労対策:甘味が続くと食欲が落ちるので、塩味・酸味・温度差を活用。例えばレモン汁を少量入れるとリフレッシュ効果。
- 個体差を把握:同じ量でも吸収スピードは人それぞれ。スパーリング日や減量末期にテストし、胃腸の許容量を把握しておく。
まとめ
- 計量後の 4〜6 時間は 補給効率が最大。
- クラスターデキストリン+塩で胃を素通りさせる糖点滴を最初に。
- 高 GI の塩むすびで固形分を追加し、低脂肪チョコレートミルクでホルモンブースト。
- ハチミツ×マルトデキストリンで吸収経路を 2 車線化。
- 高ナトリウム ORSで水分と電解質を漏れなく回収。
この 5 アイテムをローテーションすれば、「1 分でも早く」「1 g でも多く」身体を元に戻し、翌日のリングで 100 % のパフォーマンスを発揮できます
これはあくまで理論的にベストであって本当にベストかは選手次第です
効率だけを極めた究極のリフィードを色々トライして見つけていきましょう
ではまた:-)
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