プロボクサーの正しいカロリー設定と減量法|PFC設計・食事管理でパフォーマンスを最大化

減量・ダイエット知識

こんにちは、かいとうです

プロボクサーが結果を出すうえで、減量=体重を落とす作業ではありません。
真の目的は「適正体重でリングに上がり、最大のパフォーマンスを発揮すること」。そのためには、正しいカロリー設定と、段階的で科学的なカロリーの減らし方が必要です。

このブログでは、専門的な内容を噛み砕きながら、次の疑問をすべて解決します。

  • 自分に合った**カロリー設定(TDEE)**はどう作る?
  • 減量期にカロリーをどのくらい・どんな順番で削る?
  • 筋肉を落とさず脂肪を落とすするPFC(タンパク質・脂質・炭水化物)の決め方
  • 試合直前の調整と水抜きの基本
  • 実例つきの1日メニューと数値

カロリー設定が苦手な選手は最後まで読んでいってください





結論(先に要点)

  • 減量の中核は「正確なTDEEの把握」と「週0.5〜1.0%体重減を目安にした段階的なカロリー調整
  • タンパク質は高め(目安:除脂肪体重×2.2〜2.6g)、脂質は落とし過ぎない(0.8〜1.0g/kg体重を起点に状況で微調整)、炭水化物は練習強度に合わせて日内・日間で配分
  • 2〜3週間ごとに進捗レビューし、停滞時はまず炭水化物のタイミング・量を最適化→次に脂質を少しずつ調整
  • 慢性的な脱水・極端な塩抜き・長期の極低カロリーはパフォーマンス低下とケガのリスクを高める
  • 計量直後は水・電解質・炭水化物の迅速補給→固形食へ。計量〜試合の時間軸で腸に負担の少ない“吸収しやすさ”優先

プロボクサーにとってのカロリー管理の重要性

ボクシングは高強度・反復的な運動。パワー発揮やスピード、意思決定の速さには**糖質(グリコーゲン)**が要です
一方で、急激なカロリー不足は筋グリコーゲンの枯渇・回復遅延・免疫低下や睡眠質の悪化を招き、パフォーマンス低下や怪我につながる
つまり理想は、

  1. カロリー不足を最小限の範囲にコントロールしつつ、
  2. 練習に合わせて糖質を“必要なタイミングで必要量”入れること。

この両立こそが身体づくりの核心です。


正しいカロリー設定:BMR→TDEE→減量カロリー

ステップ1:基礎代謝量(BMR)を出す

  • 体脂肪率が分かる→Katch–McArdle式(除脂肪体重ベース)
    BMR = 370 + 21.6 × 除脂肪体重(kg)
  • 体脂肪率が不明→Mifflin–St Jeor式(実測しやすい)
    • 男性:BMR = 10×体重(kg) + 6.25×身長(cm) − 5×年齢 + 5
    • 女性:BMR = 10×体重(kg) + 6.25×身長(cm) − 5×年齢 − 161

ステップ2:活動代謝を掛けて総消費(TDEE)を推定

活動レベル目安係数ボクサー例
低〜中1.45–1.60技術練1回/日・NEAT高め
中〜高1.60–1.75スパーや走り込みを含む日
1.75–1.952部練・高強度連日

TDEE = BMR × 活動係数

ステップ3:減量スピードを決めて摂取カロリーを設定

  • 目安:週0.5〜1.0%の体重減
  • 体重60kgなら週300〜600g減が目安。
  • カロリー差の概算:1日あたり −300〜−600kcal(個体差あり)
週あたりの体重減リスク1日の赤字の目安
0.5%−300kcal前後
0.75%−400〜−500kcal
1.0%中〜高−500〜−650kcal

過度な赤字(例:−800kcal超/日の連続)はパフォーマンスと回復を犠牲にし、後半で伸びない身体になります。


減量におけるカロリーの減らし方:段階的・賢い調整

原則:−10〜15%から開始し、2〜3週ごとに見直す

  • 初期は**TDEEの−10〜15%**でスタート。
  • 2〜3週間の体重トレンド、練習の質、主観的疲労(RPE)、睡眠を見ながら微調整(±100〜150kcal)
  • 停滞したらいきなり大幅カットではなく、
    1. 炭水化物のタイミング最適化(練習前後に集中)
    2. 脂質をわずかに削る(−10〜15g/日)
    3. 有酸素運動を増やして+100〜150kcal消費
      の順で優先

リフィードとダイエットブレイク

  • リフィード(1日):練習強度が高い日や停滞時に、炭水化物を中心に+300〜600kcal
  • ダイエットブレイク(3〜7日):疲労が強い時にカロリーを一時的にあげてホルモン・コンプライアンスの回復を優先する

失敗パターン

  • 早期から脂質極端カット→ホルモン低下・回復不良
  • 毎日同じPFC→練習強度と合っていないため無駄が出る
  • 水・塩の長期制限→慢性脱水→パフォーマンス/安全性悪化

筋肉を落とさず脂肪を減らすPFC設計

タンパク質(P)

  • 目安:除脂肪体重×2.2〜2.6g/日
  • 体脂肪が多めの選手は体重×1.8〜2.2gから開始→調整。
  • タイミング:練習後・就寝前に重視(吸収性の良いホエイ・低脂質食品)。

脂質(F)

  • 目安:体重×0.8〜1.0g/日(まずは下限を切らない)
  • 皮膚・ホルモン・脂溶性ビタミンの吸収に必要。闇雲に削らない

炭水化物(C)

  • 高強度日は体重×4〜6g/日、軽い日は**×2.5〜4g/日を目安に波をつける**。
  • **練習前後(特に前〜中〜直後)**に集中配分。
  • 試合週は練習量に合わせて段階的に減らしつつも“質の維持”に必要な分は確保

PFCテンプレ(例:60kg級・中強度日・−500kcal目安)

指標数値
タンパク質150g(=600kcal)
脂質55g(=495kcal)
炭水化物280g(=1120kcal)
合計2215kcal(例)

※あなたのTDEEに合わせて総量を調整。


減量中にやってはいけないNGな食事法

  • 長期の極低カロリー(VLCD):代謝・回復・免疫低下→練習の質が落ちる。
  • 常時低糖質:スピード・反復出力が命の競技で相性が悪い。
  • 塩抜き&水抜きの前倒し:慢性的脱水→パフォーマンス・安全性ともに悪化。
  • 練習直前の高脂質・高繊維:GI不良で動けない。
  • 加工食品・酒の頻用:炎症・睡眠質悪化→回復鈍化。

実際の1日の食事例(数値入り)

ケース:60kg級、TDEE 2600kcal、目標 −500kcal/日 → 2100kcal

  • 朝(練習前2〜3h)
    • 白米250g(炊き上がり)/卵2個/鶏胸100g/味噌汁
    • たんP35g・脂15g・炭C85g=635kcal
  • 練習直前(30〜45分前)
    • バナナ1本+蜂蜜小さじ1、スポドリ250ml
    • たんP2g・脂0g・炭C35g=150kcal
  • 練習中
    • スポドリ500〜750ml(Na含有)+マルトデキストリン20〜30g
    • 炭C20〜30g=80〜120kcal
  • 練習後(30分以内)
    • ホエイ30g+低脂肪乳200ml+おにぎり1個
    • たんP35g・脂5g・炭C55g=470kcal
    • うどん(ゆで)300g+ツナ水煮1缶+温玉1
    • たんP30g・脂12g・炭C95g=630kcal
  • 夜(就寝2〜3h前)
    • 魚200g(白身)+じゃがいも300g+オリーブ油小さじ2+青菜
    • たんP45g・脂12g・炭C60g=580kcal
  • 合計
    • たんP147g・脂44g・炭C350〜360g=約2145〜2185kcal
      → その日の実消費に応じて練習中の糖質で微調整(−30〜+60g)。

ポイント:炭水化物は練習の前後〜中に寄せる。脂質は朝と夜に寄せて消化を安定。


2つのケーススタディ(カロリー設定の実践)

① 63.5kg級:現在68.0kg、6週後に計量

  • 週あたり目標:−0.6kg(約0.9%/週)
  • 初期設定:TDEE推定2700kcal → −12%開始=約2375kcal
  • P:除脂肪体重52kg想定→2.4g×52=125g(500kcal)
  • F:0.9g×68=60g(540kcal)
  • C:残り=2375−1040=1335kcal → 約335g
  • 調整例:週次レビューで落ち幅が−0.4kg/週なら**−150kcal**、−0.9kg/週超が続くなら**+100kcal**し回復と出力を優先。

② 58.9kg級:現在64.0kg、8週後に計量

  • 週あたり目標:−0.64kg(1.0%/週)だが後半の水抜き幅を見込み−0.5〜0.6kg/週で安定させる。
  • 初期設定:TDEE 2550kcal → −10%=約2300kcal
  • P:除脂肪体重50kg→2.4g×50=120g
  • F:0.8g×64=51g
  • C:2300−(P480+F459)=1361kcal → 340g
  • 試合3週前から高強度日のCを+30〜50g、軽い日はその分マイナスで波配分。疲労が強い週はリフィード1日を挟む。

試合直前の調整と水抜きの関係

グリコーゲンと体内水分

筋グリコーゲン1gに対して約3gの水が細胞内に保持されます。炭水化物を賢く扱えば、体内水分の“保持・解放”をコントロールしやすくなります。

水抜きの基本姿勢

  • 水抜きは前倒しで長くやらない(慢性脱水はNG)。
  • 実務上の目安として、多くの選手は最終24〜36時間内での一時的な調整炭水化物・塩のコントロールで仕上げます。
  • 過度(総体重の大幅%)はリスク増大。5~8%の範囲を超える場合は誰かの監修で行うべき

48〜72時間前の考え方(例)

  • 炭水化物:練習量に合わせて段階的に調整。スパーが終われば自然に減る。
  • 塩と水長期制限はしない。最終日のむくみを見ながら軽く調整する程度に留める。
  • 繊維とFODMAP:ガス・残渣対策で徐々に低めに(個体差を必ず試走)。

重要:水・塩の恒常性を壊さないこと


パフォーマンスを維持するリカバリー食事戦略(計量後〜試合)

計量直後(0〜60分)

  1. 水+電解質(Na優先):体重×7〜10mlを目安に数回に分けて
  2. 素早い糖質体重×1.0〜1.2g(マルトデキストリン、白米のおにぎり、蜂蜜入りパンなど)。
  3. 消化にやさしいタンパク:ホエイ20〜30g。

その後(60〜180分)

  • 糖質を体重×2.0〜3.0gまで追加(2〜3回に分ける)。
  • 低脂肪・低繊維の固形食を少量ずつ
  • 塩は食事と飲料で継続的に補給

試合当日

  • 朝〜昼:白米・うどん・餅・ジャムパンなど消化性の高い糖質中心、脂質は少なめ。
  • アップ60〜90分前:バナナ+蜂蜜、スポドリ。
  • アップ中:少量の糖質+電解質。
  • 直前:消化負担の大きい固形食は避ける。

目的は「グリコーゲン回復+細胞内水分の再充填」。同時に胃腸の快適さを守ること。


よくあるQ&A(簡潔版)

Q. 減量停滞時、まずどこを削る?
A. 炭水化物の“場所”(練習に不要な時間帯)→次に脂質を−10〜15g。タンパクは維持。

Q. 夜の空腹が強い
A. 夕食の炭水化物を一部就寝前に回す(低脂肪・低繊維)、または高たんぱくゼリーなどで対応。

Q. 疲労が溜まってくるとに集中力が落ちる
A. リフィードの導入、睡眠時間の確保電解質の見直しを最優先。


まとめ:正しいカロリー管理が強さにつながる

  • TDEEを根拠にしたカロリー設定週0.5〜1.0%体重減の範囲を保つこと。
  • 高たんぱく・適脂質をベースに、炭水化物を練習軸でコントロール
  • 水・塩・糖質の三位一体の設計で、減量とパフォーマンスは両立できる。
  • 2〜3週間ごとに体重・練習質・主観疲労・睡眠でレビューし、小さく速く軌道修正。

「食べない」ではなく、“勝つために食べる”減量へ。あなたの食事管理が、勝敗の分水嶺になります。

これを参考に自身で管理するのもいいですし、それが面倒という人は誰かに管理してもらえればいいです

私に相談したい方は公式LINEからご連絡ください

ではまた:-)

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