ボクシングは身体能力や精神力を極限まで使用するスポーツの一つです
ラウンド間の1分間のインターバルをどのように活用するかで、次のラウンドでのパフォーマンスが大きく変わります。このブログでは、実用的でエビデンスに基づいた、1分間の回復戦略について紹介します。
回復を最大化する5つの重要ポイント
1. 呼吸法の最適化
激しい運動の後には、深くゆっくりとした呼吸を行うことが重要です。酸素を効率よく取り入れ、体内の乳酸を排出しやすくします。ここで大切なのは「吸う」ことより息を「吐き出す」ことを意識することです
実践方法:
- 腹式呼吸を意識して深く吸い、ゆっくりと吐き出します。
- 吸う: 2秒、吐く: 6秒を目安に行います。
- 背中を伸ばし、リラックスした姿勢で安定しながら呼吸を行いましょう。疲れると前に体を倒してしまう選手もいますが体を起こして肺を広がりやすくする必要があります
Brown & Gerbarg (2005)の研究では、深い呼吸が副交感神経を活性化し、心拍数の回復を促進することが示されています。また、適切な呼吸は精神的なリラックス効果も期待できます。
2. 最適な姿勢と動き
リングのコーナーで休む際の姿勢や動きは、回復に大きく影響します。完全に静止してしまうと血流が滞り、疲労物質が除去されにくくなります。
実践方法:
- コーナーに座ったらトレーナーに足を軽く解してもらうなどで軽い足踏みやステップを行い、血流を維持します。
- 肩や腕を軽く回すなど、筋肉をリラックスさせる動きを取り入れます。
- 無理に座り込むのではなく、立ったまま適度に動くこともありです。血流を滞らせない事が大切です
3. 冷却の活用
試合中には当然体温が上昇しているため、体を効率よく冷却することで回復を早めることができます。
実践方法:
- 冷却タオルや氷嚢を首・頭部・心窩部に当てる。
- 冷水を少量ずつ摂取する(100〜150mlが目安)
Peifferら(2009)の研究では、首元や頭部を冷却することで体温を効率的に下げ、疲労感を軽減できることが示されています。既にやられている陣営が多いですが、この方法が有効です。
4. メンタルのリセット
インターバル中に心をリセットし、次のラウンドに向けた集中力を高めることも重要です。
実践方法:
- コーチと簡潔に戦術を確認し、冷静さを保つ。
- ポジティブな自己暗示を選手はイメージして、トレーナーもそれに則る声がけをする
研究でも、メンタルスキルのトレーニングがパフォーマンスに与える効果が確認されています。特にポジティブな自己暗示は疲労感を軽減し、集中力を高める効果があります。選手を煽るように発破をかけるトレーナーもいますが、逆効果な訳です
傷の止血を効率よく行う方法
インターバルでは体力回復だけでなく、顔面を中心としたカット(傷)した場合の処置も大切になります。1分間のインターバル中に効果的に止血し、次のラウンドに備えることが重要です。数多くの試合を見た中で効率的な方法をしている陣営はほぼいません。是非参考にしてください
1. 傷の圧迫止血
まず、清潔なタオルを使って傷口や顔についてる血液を吹きます
傷の程度を瞬時に判断する必要があります
止血をする上で1番重要なポイントはここです
正直、これだけしっかりやってればいいくらい重要です
2. ボスミンの使用
エピネフリンを含むボスミンは、血管収縮作用があり、出血を迅速に抑えるのに有効です。
綿棒にボスミンを適量染み込ませ、傷口に直接塗布します
出血を確認したら陣営はすぐに綿棒につけて準備しましょう
3. ワセリンで保護
ワセリンは傷口を保護し、再出血を防ぐのに役立ちます。また、ラウンド中のさらなるダメージを軽減するバリアとして機能します。止血をしっかりした上で、傷を覆うように保護しましょう
Guptaら(2020)の研究では、ワセリンが傷口の保護と感染予防に効果的であることが示されています。
4. エンスウェルの使用
エンスウェルは金属製の冷却ツールで、腫れや出血を抑えるために使用されますが、出血している際は止血を優先させた方がいいので無理に傷口に使う必要はありません
推奨ルーチン: 傷の止血と保護の流れ
- 最初の10秒: タオルで傷口を拭いて傷口確認し、ボスミンを付けた綿棒で即圧迫止血
- 次の40秒: 圧迫し続ける。傷口を確認しない(というより圧迫を止めない)
- 最後の10秒: 傷口にワセリンを塗布して保護する
99%のセコンドが、傷を圧迫→すぐ確認→圧迫→すぐ確認…これを繰り返しています
傷を見たくなる気持ちは分かりますが、血を止めたいならとにかく圧迫をやめない事です
ボスミンを使用しても1分間では作用しないためとにかく圧迫することが止血への近道です
セコンドワークのシミュレーション
選手に試合中にどんなトラブルがあるかは分かりません
拳を痛めたり、顔をカットしたりetc…
セコンドはそれらに対応するために常にシミュレーションをしていく必要があります
観戦してると「あー何も準備してないから慌ててる」というのが目に見える陣営もあります
セコンドに期待できないなら(本来あってはなりませんが)選手が指示するのもありでしょう(自分がそうでした)
常日頃のコミュニケーションがこういうところにも出るかもしれません
日々の練習だけでなく試合をシミュレーションした動きを意識して差をつけましょう!
ではまた:-)
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